村人達は、
「尾鷲辻には重宝な馬がおるげな」
と言うとったといいます。
その馬は3本足で、背中にはいっぱいの笹を生やしとったので、『笹馬』(ささうま)といいます。
『笹馬』の背には笹やら苔やらが生えとって、腹根(はらね)ゆうて、笹の根が腹まで回っとったと。
笹はどうやって水をもろうとったかと村人達は思うたが、その背には苔土が積もっとって、押せばピューッと水がしたたったと。
乾いたらどうするんやと思うた者もおったが、そこは大台ケ原、3日と雨の降らん日はない。乾くことはなかった。
なんでこの馬が重宝かといいますと、雨が降り続いて他の獣達が動けんで、腹すかして血眼になっとる時、ひとり昼寝して、背中の笹の新芽をムシャムシャと喰うとったからです。
その首は尻までまわって、ムシャムシャ喰うとったそうです。
新芽がのうなってしまう心配はいらん。ひと月もしたら、次にまた新芽が生えてきたからです。
そして春にはタケノコも生えてきたそうです。
それで、人はこの馬を『重宝な馬』とか『自給自足の馬』とか言ったとか。