大台ケ原の狸

 大台には今でもたくさんの狸がおりますが、昔は、よう人が化かされたという話です。

 ある時、何人かの村人が大台ケ原山頂めざしてのぼりよる時に、頂上まであとわずか6キロというところの谷筋まで来た。
 村人達はやれやれとひと休みしてから、もう一息、と山頂をめざした。

 ところが、一息のはずやのに、なんぼ歩いても歩いても着きよらん。
 「はておかしいな…」と思いながら歩きよるうちに、どこを歩いてるのかもわからんようになって、そのうちとうとう夜になってしもた。
 しかたないので、村人達は近くの谷で寝ることにした。

 さて翌朝。
 空が明るうなってくると、あたりのようすがだんだん見えてきた。

 目をさました村人達は、まわりを見渡してびっくりしてしもうた。
 なんと昨日出発した、その同じ谷筋で寝とったいうんやから、こんなおかしいことはない。

 村に帰ると、みんなに「狸に化かされたんや」と言われたが、本人達は、
「いや、狸なんぞに化かされておらん」と言い張った。

 そして結局、また化かされたと。

 他にもこんな話があります。

 狸に化かされると、ようボケよって、「晩飯のしたくができたあ」いうてなんぼ呼んでも返事をしよらん。
 見にいたら、押入の中でボケーッとしとるんやと。

 そんな時は、冷たい流れの水をバシャーッとかけると、もとに戻るいいます。

尾鷲辻の馬へ・・・