オライビ 1898年

第19号

過去を見つめる

 長らくのご無沙汰だった。ホピの世界の旅に出ようか。

 これまで君はホピの地にバハナが来る直前と、来た直後の時代を旅した。子供の頃はメサの頂上や、村を支えるトウモロコシ畑や、谷を自由に歩き回っていた。
 しかし悲しいかな、君がバハナに捕らえられ、遠くの学校に送り込まれてから、この自由もなくなってしまう。君のホピとしての生活はすみに追いやられ、バハナのルールで生きることを強いられたのだ。
 そして君は偉大なる創造主が定めた生き方や掟を忘れてしまった。

 さて、とらわれのまま時がたち、君はもう若い男となって、白人の世界のことをたくさん学んだ。君は主人から「商売」を教わり、それで世界に飛び込んで自分で生きてゆくことができると言われた。
 5年も経つと君は解放され、家に帰ることも許される。
 君は将来の大きな夢ができた。バハナの下で働き、たくさん稼ぐことだ。そうすればバハナが持つ物は何でも買うことができる。店にあるきれいな物や、あるいは土地を買って家を建てることさえできるのだ。バハナのように。

 君が村へ帰ると、家族は喜び、君の成長ぶりに驚く。もう立派に畑仕事や家畜の世話ができるし、儀式に参加することもできる。

 しばらくいない間にいろいろな事が変わってしまったことに、君は気づく。人々は年を取り、家族も増えている。
 一番大きな変化は、君が以前とは違う村に帰ってきたということだ。環境も違う。君が連れ去られてから、家族は新しい場所に移り、新しい生活を始めなければならなかった。前の村が荒れ果ててしまったからだ。
 ホピの生き方を貫き、白人に同化されないようにするためには、こうするしかなかったのだ。

 君はがっかりして戸惑う。世界が君の将来の計画を押しつぶしてしまったかのように。
 君は村で家族のために働くが、いつも不満が頭をもたげる。大地を耕し家畜を追い、儀式を行うことが、少しずつ心から離れてゆく。それらが「お金」ほどの価値が無いように思えてくるのだ。素敵な物を手に入れるためにはお金が必要だ。君は今の生活がむなしいものに見えてくる。1年も経つと、君は白人の世界で働くことを決意する。家族は反対し、助言と警告を与えるが、最後には行くことを許してくれる。
 君はもう一人前で、自分の力で生きてゆくことを誇りに思うだろう。

 夜明け前、君は食料と水筒と、身の回り品をいくつか持って家を発つ。お父さんやおじいさんはいくばくかのお金をくれる。走り屋の君は、日暮れまでには一番近くの街に行き着く。

 古くてさびれた村から逃げ出すのはいい気分だ。それにひきかえ、街は興奮に満ちて、望んでいた生活を約束してくれる。大儲けする夢があるのだ。
 君は夢にまで見た、念願のアイスクリームとクッキーをむさぼる。とらわれていた時に覚えた味が忘れられなくなったが、村にそれらは無かったのだ。

 次に君は仕事を探すが、小さな村では簡単には見つからず、もっと大きな街に出ることに決める。
 君は貨物列車に跳び乗り、2日もすれば見たこともない大きな街に着く。初めての街で、君はどうして良いかも分からず、路頭に迷うことになる。
 昼の間に仕事を探し、どんなことでもしようと思う。そしてまず最初に実感することは、バハナの商業学校で教わったことが何の役にも立たないということだ。有り金はすぐに消え、路地裏や公園で寝ることになり、あまりの空腹に耐えかね、ゴミ箱をあさって食べるようになるのだ。

 内気な君は助けを求めるすべもなく、誰も助けてくれる人はいない。
 みんな自分が生きるだけで必死なのだが、君にはまだ実感はない。

 ある朝、君はよその家の前で寝ていて警察に逮捕され、恐怖と混乱の中で多くの尋問を受ける。そして君はある場所へ連れて行かれ、後にそれが救世軍(Salvation Army:国際的なキリスト教団体)であることを知る。そこで君は風呂に入れられて清潔な服をもらい、大きな街に来てから初めての暖かい食事にありつくのだ。君はそこから農場の手伝いをするように手配される。

 農場には君と同じような、技術も職もない人々に出会う。そこでは野菜と果物の収穫が仕事だ。仕事はきつかったが、少なくともここでは食事に困らない。
 一緒に働く人々はとてもいい人ばかりで、近くの小屋にみんなで暮らしている。みんなで食糧を買うために稼いだお金の中から、わずかばかりの貯金をしてゆく。野菜や果物は自由に食べることができた。
 ここで君は学校では教えてもらえなかったことを、たくさん学ぶのだ。中でも初めてのことは、アルコールと「プロの女性」だ。君は楽しさに浮かれて、たくさんお金を儲けようと夢見ていたことも、きれいに忘れてしまう。

 しかしこんな生活はすぐに飽きてしまい、君は自分のふがいなさが情けなくなる。仲間のもとに帰りたくても、恥ずかしくて合わせる顔がない。
 ある日、君は荷物をまとめてそこを出る。そしてまた貨車に跳び乗って、1年以上も前に跳び出した小さな町に戻るのだ。

 いらいらした気持ちや敗北感は薄れ、いい気分を取り戻したのは、故郷に近づいたせいだろう。君が在るべき場所だと、今になって知った故郷だ。
 君は経験を通じて貴重なことを学んだ。バハナの世界の価値観は間違っている。学校や現地で学んだことは、お金儲けにも、夢の実現にも役立たなかった。

 村に戻ると、みんなは君の旅が成功しなかったことは何も聞かずに、受け入れてくれる。1年も経たないうちに、君は村でより高い位置の立場に置かれるようになる。長老たちが助言してくれたことが正しかったことを、今さらながら君は思い知るのだ。
 自然と人間の内なる知恵と知識を学べ。それこそが真実だ。偉大なる創造主から授かったものを守ることこそが重要なのだと。

 * * * * *

 ホピの目を通じて共に旅をしてくれたことに感謝する。私たちが生き方を変えさせられようとしていることが、いかに無益で悲しむべきことなのか、あなたは実感してくれることと思う。
 ありがとう。祝福をこめて。

 
ユキウマ(ホテヴィラの創設者)合衆国第5騎士団の捕虜に(制服の男の横、後列中央あたりに立っている)

記念式典

 9月4日、5日、6日と、ホテヴィラ村の伝統派コミュニティで、ユキウマ酋長が1906年9月6日にホテヴィラを創設したことを記念して式典が開かれた。彼は誰にも流されることなく、グレイト・スピリット、創造主の教えや信心をかたくなに守った。

 大きな反対勢力にも屈することなく、彼は合衆国政府と政府軍の力に対して立ち向かった。彼の強さは、グレイト・スピリットから授かった聖なる石板にあった。何度投獄されても、辛い目にあっても、賄賂も、また偉大なるアメリカ国民によるご機嫌取りでも、とうとう彼をその信じる道から引き離すことはできなかった。
 彼の精神は今でもホテヴィラ村に受けつがれている。

 4つの方角から来た人々は、記念式典を成功のうちにおさめた。主役は旧メキシコからの人で、1848年、アメリカ合衆国とメキシコの間で交わされたグアダルーペ・イダルゴ条約(1848 Treaty of Guadalupe Hidalgo)の締結時にも出席したという。
 ホピの人々に絡む重要な事件についても調査され、そこで分かったことがとても感動的だったので、9月14日から16日に開催されるジュネーブ会議に、ホピによって提出されることとなった。そこで条約がどんな結果を生んだのかが見えてくることだろう。

上下水道計画について

注:村の水道協議会(Water Committee)と伝統派宗教指導者の間で行われた会合について、報告すると約束したが、どうやら報告するほどの中身のないものに終わったようだ。私たちの言葉も努力も無駄だった。
 彼らは私たちが話す、深い部分について聞こうとしないのだ。私たちの水道計画への反対は、人間と創造主の間に交わされた宗教上の理由によるもので、この信仰の自由こそがホテヴィラ村が設立された理由なのだ。

 村にただ水道パイプを引くだけのことに、なぜそんなに大騒ぎするのか。私たちの間でも、多くの部外者と同じようにこんな質問をする者がいる。
 確かに小さな問題に見えるかも知れないが、これは私たちにとって大変重要なことなのだ。かいつまんで説明しよう。

 この計画は伝統派リーダーたちの意向を無視してもちあがったものだ。自分たちのことを村議会(Village Committee)と呼んで、村の主導権や村の仕事を握ろうとする困った者たちがいる。彼らは伝統派のリーダーたちや人々の意見も聞かずに、村全体が白人の生活を取り入れたがっていると言うのだ。
 彼らの心ない行いによって、私たちや彼ら自身の先祖が創造主であるグレイト・スピリットとの間に交わした約束が破られているのだ。
 それは政府の魔の手によって、昔も今も苦しめられている人々が結んだ、質素なつつましい生活をする約束なのだ。私たちの子供やその子供たちが、仲良く並んでグレイト・スピリットの道を歩むための。

 ホピの地の中にあるこの場所は、人類のシェルター(避難所)として守ってゆかなければならないと言われていた。この場所は人によって汚されてはならないのだ。

 彼らは毎日流れるニュースを、見たり読んだりしているのだろうか。世界中に広まる自然災害、衝突、戦争を。彼らは本当に先祖や創造主の精神を、すっかり失ってしまったのだろうか。

 私たちはよく考えてから行動を起こし、調和とバランスを取り戻すことが最も重要だ。さもなければ、滅んでしまうことになるだろう。
 明日のことは誰にも分からないのは当然だが、今日、もし自然災害、人為災害が起きたらどうなるだろう。水道や電気がまず絶たれるだろう。それに頼ってきた大都市の多くの人々は困ったことになる。
 一方私たちの村は壊れる水道が無く、止まる電気が無いので心配もない。私たちの泉や井戸は、超強力な「灰の詰まったヒョウタン」が落とされて、大地やすべての生命が焼き尽くされてしまうまでは、枯れることもなかった。

 今や私たちはギリギリのところにいる。子供たちが私たちを見えない所まで押しやってしまったら、もう終わりだ。私たちの本来の生活は、永遠に失われてしまうだろう。心配と緊張が毎日つのるばかりだ。
 子供たちはここまできてしまった以上、昔の生活に戻すのは難しいだろう。ホピは偉大なる白い力の犠牲になるのは、私たちが最後だと考えている。もし浄化の日が来なかったら、偉大なる創造主は私たちから大地を取り返すという。私たちが大地の世話をしなくなり、大地に住む資格を失ってしまったからだ。
 このようなことを言っても、子供たちにとって何の意味もなく、耳を貸さないのだが。

 水道協議会に話を戻すと、しばらくお休みになりそうだ。楽しみは続かないもので、時間とお金をさんざんかけておいて、水道の計画は中止されたようだ。
 話題にするのが早すぎた。しかしまた1ヶ月もすれば動きだすだろう。

 最悪でもサリー・ビッグ・ポンド(Sally Big Pond)は辞任に追い込まれたか、解任されたのだろう。ホピのリーダーたちや、伝統派を支持するヨーロッパの人たち、しかも全く知らない人たちに下らない手紙を書くという軽率さのせいだ。
 彼女が作り出した状況は、国際問題になるほどの「在り得ないこと」で、水道協議会や、彼女が従う政府に泥を塗ってしまった。
 彼女の協力者、M.ロマハフテワ(M. Lomahaftewa:C.D.S.)は恥を感じて辞任した。

 水道協議会は新任を雇って再編成したが、それも2、3日で終わってしまった。両人とも不正が原因で解任されてしまったが、計画自体は多分リーダーのいないままで進んでいたようだ。ホピの目から見れば、水道協議会は村の組織を支援し、先導してゆくのには向かない。すぐに廃止すべきだ。すべての人々に私たちの懸念について考えてほしい。

私たちのこと

ご挨拶:長らくお待ちいただき、ありがとう。出版が遅れたことをお詫びし、読者の皆さんに遅れたわけを説明したいと思う。これを手にした人なら、状況を理解していただけることだろう。

 私たちは外部の圧力によって大きなプレッシャーを感じている。聖なる行事を進める時も、心意気をくじかれ、気弱になっている。

 他の多くの人々と同じく、私たちも活動を続けるために、外からの助けと応援を必要としている。お金と道具が無いとコミュニケーションがとれないことも分かっているし、救いの手を差し伸べてくれる善き人々に感謝したい。
 コミュニケーションも大切だが、私たちは他にもたくさん同じような大切なことをしている。儀式を行い、畑仕事をすることだ。

 私たちはものを書くのが苦手だ。教養もなく文法もあまり知らない。そんな状況だから、思っているメッセージが届くのが遅くなる。気にかけてくれる人々に、すぐに状況をお伝えできなくて心苦しい。
 しかし私たちに便りをくれた人の名前や住所は、すべて残しているので、分かりやすいように書いて出してほしい。

 障害は多いが、私たちは外の世界に向けてメッセージを伝えられることに満足している。些細なことだが他の出版物と比べようとも思わない。私たちは孤立した場所で、何とか続けているのだ。
 『カトクティ』(政府手先新聞)は、もう廃刊したと聞いた。先進派にとっては大きな損失だろう。彼らは政策を押しつけたり、伝統派指導者をこき下ろすのを、この新聞に頼りきっていたから。

 あなたに手を貸していただき、『テックヮ・イカチ』を出版し続けることによって、伝統派ホピのメッセージが外の世界に届くよう祈りたい。

 あなたに感謝する。

アメリカ・インディアンの権利についての第4ラッセル決議機関(Fourth Russell Tribunal)の報告

 オランダ、ロッテルダムの第4ラッセル裁決機関の報告書は間もなく出るだろう。中南米と北米のネイティヴたちの、72ページにわたる書類による報告になる。郵便代もかさんでいるので、興味ある方は郵送代を同封してほしい。

ホピ商人の排斥

 ふたたび「ホピ部族議会と称するもの」が私たちの仲間に圧力をかけた話が出てきた。それがひとりに対してなら大した問題にならなかったかも知れないが、この流れは私たち村の伝統派にとって、また今後の私たちにも影響を及ぼすものになる。

 それはホピ部族議会条例17条にある規定だが、ホピ族がホピの土地内で商売をするためには、ライセンスを取得せねばならず、その料金が10ドルだというのだ。
 もしこれを守らず30日間経過すると、部族議会の弁護士が法的手続きを取るという。訴えられた者は民法、刑法の両法で処罰される。

 これは、早い話が商売をやめさせられ、自分の土地の権利を奪われるということだ。
 これは一体どういうことか。自分たちの思い通りにするために、村のしくみを壊し去ってしまうための脅迫だとしか思えない。

 私たちは商人たちが弱気にならないように力づけている。なぜならばホテヴィラ村は完全な独立を条件に設立されたものだからだ。私たちはバハナ政府の社会制度から逃れ、私たち自身の伝統的な社会を守るために、ここに移ってきたのだ。
 彼らとのかかわりを避けるため、彼らの組織内には、私たちのメンバーは誰一人としてホテヴィラ村の代表として所属していない。よって私たちが彼らの組織に所属することはありえない。
 極論すれば、彼らの法律は私たちには通用しないのだ。

 私たちが恐れるのは、もし一度でも彼らの言い分に従えば、次にまた新たな要求が出てくるのが明らかなことだ。
 この件については、急を要するため、伝統派ホピの支援者たちに、私たち伝統派を支持していることを手紙に書いて、アボット・セカカプテワ議長と、ジョアン・マサカッテワ(Joann Masaquaptewa)税務署長に出してほしい。

P.O.Box 123, Oraibi, Arizona 86039-0123
Phone(602)734-2441

 この条例によって起訴されているのは、サイラス・ホヤンワ(Silas Hoyungwa)(General Delivery, Hotevilla, Arizona 86030)で、もしできれば以上3名に支持文書を送るか、電話してほしい。

 『テックヮ・イカチ』に手紙のコピーを頂くのも、意見を伝えるいい手段になり、政府手先の会議が何をしでかしているのか、よくわかるようになるだろう。興味があるなら、手紙を出してほしい。

( 翻訳: 永 峰 秀 司 All rights reserved. )


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The shield symbol with its four circles in four quadrants means:
"Together with all nations we protect both land and life,
 and hold the world in balance."

4分円の中に4つの円のシンボルの意味

「私たちは全ての国の人々と共に大地と生命を守り、世界のバランスを保つ」